「きらきら光るお空の夕焼けに」
立教大学 観光学部観光学科 3年 氷室 明花梨
この橋から飛び込んでいた人、「けんけんぱ」をして待っていた人はいないだろうか。私は目を見張っていた。
「四月は君の嘘」……聞いたことはあるだろうか。中学生のピアニストの公生とヴァイオリニストのかをりが互いの才能に共鳴し合い成長する姿を描いた小説やアニメ作品である。東京都練馬区を舞台としているが、帰り道の橋だけは、ぽつんと埼玉県に現存している場所をモデルとしているのだ。その橋では、かをりが川に飛び込んだり、公生を待っていたり、蛍に魅了されたり。かをりと公生がお互いの気持ちを伝える場所。自分の生き方を見つめる場所。心が表れてしまう場所。作品には欠かせない橋であるのだ。
私は、かをりと公生に会うために埼玉県新座市に行こうと決めた。埼玉県朝霞市にある東武東上線朝霞台の南口を出て、セブンイレブンを左に曲がった。ビルが少ないから探しやすい。いや、下り坂だったのかもしれない。私の足は軽やかに動いていった。水色に向かって動いていた。それは、頭をぐっと上に伸ばしても終わりが見えない川があった。水の流れに引き付けられるように一緒に私も歩き出していた。膝にかかるくらいの草が足に絡まりながら。グレーの瞳を見せている川の隣を。何時間歩いていただろうか。きっと1時間半くらいだと思う。目を引く街灯を見つけた。似たような家が立ち並ぶおもちゃのような街に、私が望んでいた場所があった。
16時 見たことがあるけれど、知らない場所。「前通り橋」と「土稜橋」まだら模様になってしまった大きい支柱と、曲線を描きながら水色に見える橋。灰色の塗料が剥げた椅子の上に茶色と黄土色のレンガの真ん中に、一本の街灯。黒くなった水色と黄色のタイルが組み合わされて足元に続いていた。アニメの中に入ったような景色だった。キャラクターが飛び出してこないかと、あたりを見回すと、グレーの瞳に見つめられていた。知っている人がいないそこは、蛍もいないそこは、私を心細い気持ちにさせた。
17時 固い椅子に腰かけて下を向いていると、いきなり足元に燃えるような赤色が広がった。上を向くと、その赤が世界全体を包み込んでいて、例外なく私も取り込まれていた。今までの灰色が水中に隠れると、水面が光に反射してきらきらと輝いて見えた。ざわざわと揺れていた草がさわさわと聞こえてきて、川辺に並んでいる木の葉が紅葉みたいになって左右から覗いていた。「きらきら輝いていて、僕は目を瞑ってしまう。」とそう思った。同じ景色を見られただろうか。そんな満足感に浸った。
かをりと公生が気持ちを通わせる場所。あの夕焼けは、私の心まで温かくした。アニメの世界観に入り込めるだけではない聖地だった。